多言語対応のコールセンターとは?|運営方法や注意点も解説
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外国語の電話が鳴ったとき、現場ではたいてい同じことが起こります。とっさに保留にして英語のできる社員を探し、席にいなければ折り返しを約束し、その折り返しが結局かからない。多言語対応の検討は、こうした小さな取りこぼしが積み重なった時点から始まることが多いものです。
ただ、いざ情報を集め始めた担当者が最初にぶつかる壁は、サービスの比較ではありません。「自社に必要なのは通訳なのか、それとも窓口の運営そのものなのか」という切り分けです。ここが曖昧なまま相見積もりを取ると、比較軸が価格だけに寄ってしまい、導入後に「肝心なときに繋がらない」「訳せてはいるが業務が進まない」という不満が残ります。
本記事では、多言語対応コールセンターの5つの運営方法、自社運営でつまずきやすい課題、そして外部委託を検討するときのチェックポイントを順に解説します。
多言語対応のコールセンターが求められる背景

多言語対応のコールセンターとは、外国語での問い合わせに対応できるコールセンター、コンタクトセンターの総称です。電話だけでなく、メールやチャット、SNSといった複数のチャネルを含めて呼ぶこともあります。
旅行者の需要は為替や近隣国の情勢で変動しますが、生活者の需要は契約数に連動して構造的に増え続けます。まずは多言語対応のコールセンターが求められる背景を押さえておきましょう。
訪日外国人の増加
訪日外国人旅行者数は、2025年に約4,268万人となり、過去最高を更新しました。コロナ禍前のピークだった2019年の約3,188万人を、1,000万人以上も上回った計算です。
ただし、この数字だけを根拠に多言語対応の是非を判断するのは危うい面があります。観光需要は為替や近隣国の情勢に左右されやすく、2026年上半期の累計は前年同期をやや下回りました。訪日客数を投資判断のよりどころにすると、年ごとに方針が揺れてしまいます。
もう一つ見ておきたいのが、旅行者が実際に何に困っているかです。観光庁の調査では、旅行中に困ったこととして「施設スタッフとのコミュニケーション」が上位に挙がり、困った場所としては飲食店や鉄道の駅などが多く報告されています。その多くが翻訳アプリで乗り切られているという事実は、裏を返せば、事業者側が用意した対応チャネルがまだ十分に機能していない場面が多いことを示しています。
在留外国人の増加
より構造的な変化は、日本で暮らす外国人の側で起きています。2025年末時点の在留外国人数は約412万人となり、初めて400万人を超えました。前年末からの増加率は約9.5%で、総人口に占める割合は3%台に達しています。
観光客と生活者では、問い合わせの中身がまるで違います。旅行者からの電話は、道順や予約の確認、忘れ物といった短く完結する内容が中心です。一方で生活者からの電話は、次のような内容になります。
- 契約の変更
- 料金の督促
- 故障の切り分け
- 保険の給付
- 行政手続きの照会 など
いずれも本人確認と記録を伴う業務が中心になります。通話は長くなり、誤訳がそのままクレームや二次対応の火種になりかねません。
ここで見落とせないのは、生活者からの問い合わせのほうが件数を予測しやすいという点です。旅行者の電話は季節やイベントに左右されますが、生活者の電話は契約数と請求サイクルに連動します。多言語対応を一過性ではなく継続的な業務として設計するなら、生活者の問い合わせを土台に据えたほうが、体制もコストも安定します。
もう一点、国籍の内訳も無視できません。在留者は中国やベトナム、韓国、フィリピン、ネパールなどが上位を占めます。ベトナムやネパール出身の生活者に英語で対応しようとすれば、相手の英語力に依存してしまいがちです。「英語だけそろえておけば足りる」という前提は、すでに現実と合わなくなっています。
競合他社との差別化
外国人のお客様が「きちんと対応してもらえた」と感じた体験は、口コミや再来店に直結します。逆に、電話口で言葉が通じずに諦めさせてしまえば、その顧客はそのまま対応できる競合へ流れていくのです。
とりわけ医療や金融、不動産、通信のように契約が絡む業種では、多言語対応の有無が受注の機会そのものを左右します。先行して体制を整えた事業者には、対応品質への信頼が少しずつ蓄積されていきます。後から追いかける側は、同じ水準に追いつくためのコストも時間も余計にかかりがちです。多言語対応は、単なる守りの施策ではなく、競合との差をつくる攻めの投資でもあります。
多言語対応コールセンターの種類とメリット・デメリット

多言語対応の実現方法は、大きく5種類に分けられます。「社内で持つ」か「外部に出す」か、そして「機械で処理する」か「人が対応する」かで整理すると見通しがよくなります。見積もりの単価が桁で違うことがあるのは、比較しているものがそもそも別のサービスだからです。まずは種類を区別することが、正しい比較の第一歩になります。
ここからは5つの方法を、メリットとデメリット、向いているケースの3点で見ていきます。
自社内で外国語対応できるスタッフを常駐させる
バイリンガル人材を採用し、社内で外国語対応を完結させる方法です。業務知識と語学力を一人の中に統合できるため、自社のトーンやマナーを保ったまま応対できるのが強みです。
一方で、ハードルは高めです。専門用語まで正確に扱える人材の採用は難しく、24時間や複数言語に対応しようとするとシフトが埋まりません。一人が退職しただけでその言語への対応が止まる脆さもあります。少数の言語に絞れて、通話量が安定していて、採用競争力のある企業であれば選択肢になりますが、多くの企業にとっては維持のハードルが高い方法です。
AI翻訳機・IVRシステムと連携する
自動翻訳やIVR(音声自動応答)の言語分岐を使い、一次対応を機械で処理する方法です。営業時間の案内や住所の確認、予約内容の確認といった定型的なやりとりであれば、低コストで24時間対応しやすくなります。
ただし、感情が絡む通話や法的な効果を持つ説明、訛りの強い話者との会話では、まだ機械だけに任せるのは危うい場面が残ります。誤訳がそのまま誤案内になるリスクもあるのは事実です。単独で完結させるより、「一次受付はAI、判断と交渉は人」という切り分けで組み合わせるのが現実的です。
外部の多言語対応コールセンターを依頼して翻訳してもらう
自社の日本語コールセンターはそのまま維持し、外国語の電話が入ったときだけ通訳オペレーターを通話に加える方法です。三者間通訳、三地点通訳、電話通訳などと呼ばれます。
自社のオペレーターは日本語のまま業務を進められるため、既存の応対フローやCRMへの入力手順、本人確認のルールを変えずに済むのが最大の利点です。導入も比較的速く、通話量がまだ読めない段階の第一手として向いています。
弱点は、通話時間が伸びることです。日本語と外国語を交互に往復するため、体感で1.5倍から2倍ほど長くなると見込んでおくと安全です。応対時間を評価指標にしているセンターでは、多言語の通話を別集計にしないと、オペレーターの評価が不当に下がってしまいます。まずは入電の言語別・時間帯別の分布を把握したい、という段階に適した方法です。
外部の多言語対応コールセンターに顧客対応も依頼する
外国語の入電を、専用番号やIVRの分岐で最初から外部センターに振り分け、その言語で業務まで完結させる方法です。多言語コンタクトセンターの運営代行と呼ばれます。
対応するのは、その言語で業務を進められるオペレーターです。通訳を挟まないぶん通話は短く、応対も自然になります。電話に加えてメールやチャット、SNSのメッセージまで一括で受けられる事業者もあり、問い合わせのチャネルが分散している企業に向いています。
一方で、委託先に業務知識を移す必要があるため、立ち上げには準備期間がかかる点にも注意が必要です。商品仕様や料金体系、免責事項、エスカレーションの基準といったナレッジを整えないまま渡すと、「電話は取れるが答えられない」窓口になってしまいます。入電量が一定以上で安定している企業に適した方法です。
自治体が提供するサービスを利用する
都道府県や市区町村が、住民や旅行者向けに多言語の相談窓口や通訳サービスを提供している場合があります。低コスト、あるいは無料で利用できることがあるのが利点です。
ただし、利用できる対象や用途に制限があるケースが多く、企業が自社の顧客対応にそのまま使えるとは限りません。対応時間や言語が限られていることもあります。企業の恒常的な顧客対応の代替として考えるより、初期の情報収集や補完的な手段として捉えておくのが現実的です。
多言語コールセンターを自社運営する際の課題

「バイリンガルを数名採用すればよい」という初期の見積もりが崩れる原因は、実は語学力そのものではありません。自社で多言語対応のコールセンターを設置するうえで、つまずきやすいポイントは次の4つです。
- スタッフの確保が難しい
- コストが増加する恐れがある
- 言語能力以上に文化理解が必要な場合がある
- 品質を維持するのが難しい
多くの企業がこの4点で行き詰まり、途中で外部委託へ切り替えていきます。裏を返せば、外部の事業者を選ぶ実質的な理由は、この4つの課題の裏返しにあると言えます。詳しく見てみましょう。
スタッフの確保が難しい
日常会話ができる人材が、料金プランの説明や解約手続きの案内まで、その言語で正確にこなせるとは限りません。専門用語の対訳が頭に入っていなければ、通話の途中で説明が止まってしまいます。
少数言語ほど代替の要員を採るのに時間がかかり、一人の退職でその言語の対応が止まる、という空白も生まれやすくなります。仮に3言語を24時間体制でカバーしようとすると、単純計算でも十数名の体制が必要になり、採用のハードルは一気に上がってしまうでしょう。
コストが増加する恐れがある
入電は言語ごとに偏るため、稼働率の低い言語のオペレーターが手待ちになり、人件費だけが積み上がっていきます。表に出る人件費だけでなく、研修の設計や品質管理、シフト管理といった間接的なコストも見落とされがちです。
通話量がまだ読めない段階で固定の人件費を抱えると、外部委託の従量課金と比べて割高になりやすくなります。需要が安定するまでは、変動費でまかなえる外部委託のほうが、コスト面では合理的なことが多いものです。
言語能力以上に文化理解が必要な場合がある
外国語の応対では、日本語にはない配慮が求められます。たとえば、日本のコールセンターで一般的な「申し訳ございませんが」という前置きを英語で直訳的に繰り返すと、こちらの責任を認めた発言だと受け取られてしまう場合があるのです。
敬語の使い方や断り方、クレームへの向き合い方は、言語や文化によって作法が異なります。こうした文化的な配慮まで含めた研修を自社で設計するのは、専門の部隊を持たない企業にとっては負担の大きい作業です。
品質を維持するのが難しい
日本語の応対であれば、管理者がモニタリングして品質を評価できます。しかし外国語の場合、評価する側にその言語の力がなければ、通話の中身が正しかったかどうかを誰も検証できません。
結果として、「クレームが来ていないから問題ない」という消極的な確認だけが残ります。実際には、相手が諦めて電話を切ったのか、誤った理解のまま納得してしまったのかを、区別できていない状態です。外部の専門事業者を選ぶ本当の理由は、語学力を調達すること以上に、この品質管理の仕組みを調達することにある、と考えたほうが実態に近いはずです。
多言語対応のコールセンターを外部委託する際のチェックポイント

各社のサイトを並べると、どこにも「対応言語数」と「24時間365日」が書かれています。つまり、そこでは差がつきません。チェックの前提として、自社の入電がどの言語・どの時間帯に集中しているかを、あらかじめ把握しておくことが大切です。
そのうえで、次の4項目を委託前のチェックリストとして使ってください。
- 対応言語が自社のニーズに合っているか
- 対応品質に問題はないか
- 費用がかかりすぎていないか
- セキュリティ体制は整っているか
それぞれのポイントを詳しく解説します。
対応言語が自社のニーズに合っているか
「20言語対応」と書かれていても、すべての言語が常時稼働しているとは限りません。英語や中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語あたりは24時間でも、ベトナム語やネパール語は平日の日中のみ、といった設計は珍しくありません。
確認すべきは、自社の入電が最も多い言語と時間帯の組み合わせで、実際に何時から何時まで繋がるかという一点です。深夜の緊急受付が主目的なら、日中しか稼働しない言語がいくつ並んでいても意味がありません。
対応品質に問題はないか
「応答率95%」という数字は、何を分母にしているかで意味が変わります。IVRの案内を聞いた時点で切れた呼を除いているのか、放棄された呼を含めているのか、待ち時間の上限を何秒に置いているのか。定義をそろえずに事業者間で比べても、判断材料にはなりません。
商談の場では、直近3か月ほどの実績を、言語別かつ時間帯別で見せてもらうのが有効です。繁忙期の落ち込みまで開示してくれる事業者のほうが、運用の実態を把握していると考えられます。あわせて、通訳のみを行うのか、判断まで踏み込むのかというエスカレーションの基準も確認しておきましょう。
費用がかかりすぎていないか
料金体系は、月額固定と従量課金の組み合わせが主流です。それ以外で見落としやすいのは、以下の項目です。
- 最低利用期間
- 月額の最低利用料
- 深夜や休日の割増
- 初期構築費の扱い など
入電が想定を下回った月に最低利用料だけを払い続ける契約は、試験導入には向きません。逆に、繁忙期に単価が跳ね上がる従量課金だけの契約は、予算の管理を難しくします。まずは三者間通訳で実績値を取り、入電の分布が見えてから窓口の委託へ広げる。この段階的な進め方が、費用の面でも無理がありません。
セキュリティ体制は整っているか
個人情報を扱う業務であれば、セキュリティ体制の確認は欠かせません。プライバシーマークやISO27001の取得状況、通話録音の保管方法と保管期間、在宅勤務を認めている場合の端末管理まで踏み込んで確認しておきたいところです。
海外の拠点を併用している事業者の場合は、データの越境移転をどう扱っているかも論点になります。ここを最初に詰めておくことが、後々のトラブルを防ぎます。
ポリグロットリンクの「多言語コンタクトセンター」
ここまで見てきた選び方を踏まえて、具体的なサービスの一例として、ポリグロットリンクの多言語コンタクトセンターを紹介します。
ポリグロットリンクは、電話やビデオ通話による多言語通訳と、多言語コンタクトセンターの運営代行を提供しています。日本語と外国語の両方に対応できる自社のオペレーターが、1コールでカスタマーセンターの代行運用を担うのが特徴です。事前に事業やサービスの内容を研修したうえで対応するため、依頼企業のトーンやマナーを崩さずに応対可能です。
既存の日本語窓口に通訳者が参加する三者間通話の形式にも、外国語の入電を最初から引き受ける運営代行の形式にも対応できるため、この記事で整理した「通訳接続」と「窓口代行」のどちらのニーズにも応えられます。電話に限らず、メールやチャット、SNSといったチャネルもまとめて委託できます。
自社で多言語のコールセンターを運営しており、在留外国人・訪日外国人の96%以上をカバーする言語に対応できるのも強みです。採用から教育までを自社で一貫して行っているため、専門用語を含む応対の品質にも定評があります。
事例1|JCOM株式会社
国内最大級のケーブルテレビ事業者であるJCOM株式会社では、外国人のお客様の加入が年々増える中で、英語以外のサポートを強化する必要が高まっていました。Webサイトは先行して主要5言語に対応していたものの、カスタマーセンターでは偶然その言語を話せるスタッフに頼らざるを得ず、人に依存した不安定な体制が課題になっていたのです。
導入の決め手は、Webサイトで対応していた5言語をはじめ主要な言語に幅広く対応できたこと、そして電話de通訳の導入にあたって自社カスタマーセンターとの応対フローを柔軟かつ迅速に構築できたことでした。インターネットやモバイルの販売ノウハウを持っていた点も評価されています。
現在は、新規加入の希望や各種サービスへの問い合わせ対応に活用されています。お客様の母国語で案内できるようになったことで、コミュニケーションがスムーズになり、顧客満足度の向上につながりました。電話での多言語対応が可能になったことは、在留外国人のお客様の新規加入という成果にも結びついています。
事例2|株式会社BARE NOTE STUDIO
株式会社BARE NOTE STUDIOは、東京都内で無人ホテルブランド「illi Stays」を運営しています。新規開業が続く中で、ゲスト満足度のさらなる向上と、夜間の緊急対応体制の強化が急務でした。多様化するゲストのニーズに応えるため、24時間体制かつ多言語で対応できる仕組みを整えたいと考えたことが、導入のきっかけになったのです。
決め手となったのは、24時間365日の対応が可能なこと、そして多言語でスムーズにやりとりできることでした。海外からのゲストが多い同社にとって、「いつでも・どの言語でも安心して対応できる体制」が整っていることは、大きな判断材料になったといいます。
現在は、宿泊予定・予約済みのゲストからの問い合わせ対応に、メッセージや電話といった多言語のコミュニケーションが求められる場面で活用されています。社内スタッフだけでは対応が難しい夜間でも迅速で丁寧なサポートが可能になり、ゲストの母国語で案内できることが顧客満足度の向上につながっているのです。
多言語対応のコールセンター設置は慎重に検討を
多言語対応の検討は、対応できる言語の数を数えるところから始めると、かえって迷路に入ってしまいます。先に切り分けるべきは2点です。自社に届いている問い合わせが旅行者からのものか生活者からのものか。そして、必要なのは通訳の接続か、窓口そのものの代行か。この切り分けさえ済めば、選ぶべき形態はおのずと絞られていきます。
失敗しにくい進め方は、段階的な導入です。まず三者間通訳で実績値を取り、入電の分布が見えてから窓口の委託へ広げていく。この順番なら、投資の無駄が出にくくなります。そして導入後の定着を左右するのは、案外地味な社内周知です。接続手順を1枚にまとめて各席に置く、月に一度は接続テストをする。こうした運用が、契約したサービスを実際に使われる状態へと変えていきます。
現在の入電状況が把握できていない段階でも問題ありません。どの言語がどの時間帯に、どのくらいの頻度で発生しているかを整理するところから、ポリグロットリンクは体制の設計をお手伝いします。多言語対応でお困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
■株式会社ポリグロットリンク
