コールセンターの海外アウトソーシング|メリットと失敗しない選び方
目次
コールセンターの運営コストや人材不足に悩む企業にとって、海外へのアウトソーシング(オフショア)は有力な選択肢のひとつです。一方で、応対品質やセキュリティ、円安によるコストメリットの縮小など、国内委託にはない固有のリスクも存在します。
本記事では、コールセンターを海外にアウトソーシングする際のメリット・デメリットから委託先の選び方、さらに「多言語対応」が目的の場合に検討したいもうひとつの選択肢まで解説します。
コールセンターの海外アウトソーシングとは

コールセンターの海外アウトソーシングとは、電話やメール、チャットなどの顧客対応業務を、海外の拠点やオペレーターに委託する運営形態を指します。「オフショア(offshore=海外の)」とも呼ばれ、フィリピンや中国、ベトナムなどに拠点を持つBPO事業者へ委託するケースが一般的です。
もともとは米国企業がインドやフィリピンにカスタマーサポートを移す形で広がった手法ですが、日本でも大手BPO事業者が海外に日本語対応拠点を構えるようになり、中堅・中小企業でも現実的に検討できる選択肢になりました。
ただし「海外に出せば安くなる」という単純な話ではなく、何を目的に海外へ出すのかによって、向き不向きが大きく分かれます。ここを曖昧にしたまま進めると、コストは下がったものの顧客満足度も一緒に下がった、という結果になりかねません。
アウトソーシングとBPOの違い
アウトソーシングとBPO(Business Process Outsourcing)は混同されがちですが、厳密には範囲が異なります。アウトソーシングが「業務の一部を外部に委託すること」全般を指すのに対し、BPOは業務プロセスそのものを一括して外部に委ね、業務設計や改善まで含めて任せる形態を指します。
コールセンターに当てはめると、繁忙期だけオペレーターの席を借りるような使い方はアウトソーシング、応対フローの設計・KPI管理・改善提案まで含めて任せるのがBPOというイメージです。
海外委託を検討する際も、単なる「人手の確保」なのか「運営ごと任せたい」のかで、選ぶべき事業者は変わってきます。
オフショアとニアショア・オンショアの違い
委託先の立地によって、呼び方と特性が変わります。オフショアは海外への委託、ニアショアは国内の地方都市(札幌や沖縄など人件費が比較的低いエリア)への委託、オンショアは首都圏など自社と近い国内拠点への委託です。
コスト削減効果はオフショアが最も大きい一方、品質管理の難易度も最も高くなります。ニアショアはその中間に位置し、日本語品質を保ったまま一定のコスト圧縮が見込める形態として、オフショアと比較検討されることが多い選択肢です。
コールセンターを海外にアウトソーシングするメリット

海外アウトソーシングの利点は、コスト面だけではありません。ここでは実務上とくに影響の大きい4つのメリットを整理します。
人件費を中心とした運営コストの削減
最大のメリットは、やはり人件費の差です。コールセンターの運営コストは人件費が大半を占めるため、賃金水準の低い国に業務を移すだけで、オペレーター1席あたりのコストを大きく圧縮できます。フィリピンやベトナムでは、日本国内のオペレーター人件費と比べて数分の一の水準で人材を確保できるケースもあります。
加えて、オフィス賃料や採用コストも現地水準になるため、席数の多い大規模センターほど削減インパクトは大きくなります。逆にいえば、数席規模の小さな窓口では、後述する管理コストが削減額を食いつぶしてしまうこともあるため設計には注意が必要です。
24時間365日体制を構築しやすい
深夜帯や休日の対応要員を国内で確保しようとすると、深夜割増賃金やシフト調整の負担が重くのしかかります。時差のある海外拠点を活用すれば、現地の日中時間帯で日本の夜間をカバーする体制を組めるため、24時間対応のハードルが下がります。
ECサイトのサポートやゲーム・アプリのカスタマーサポートなど、夜間の問い合わせが多い業種で採用されやすい理由がここにあります。
多言語対応・海外顧客への対応がしやすい
英語をはじめとした外国語対応の人材は、国内では採用単価が高く、確保も容易ではありません。フィリピンのように英語話者が豊富な国や、多国籍人材が集まる拠点に委託すれば、多言語のカスタマーサポート体制を比較的低コストで実現できます。自社サービスの海外展開に合わせて、現地語での窓口を立ち上げるといった使い方も可能です。
国内の採用難の影響を受けにくい
国内のコールセンター業界は、慢性的な採用難に直面しています。「コールセンター白書2025」を発行する月刊コールセンタージャパン編集部によれば、オペレータやSVの採用・育成は長年にわたり運営課題の上位を占め続けており、2025年の調査でも上位のままです。
最低時給の引き上げによって「ほかの職種より時給が高い」というかつての採用優位性が薄れ、求人への反応は鈍く、対策が限界に近づいているとも指摘されています。国内で人が採れない以上、海外の労働市場に人材プールを求めるという発想は、単なるコスト施策ではなく事業継続の観点からも合理性があります。
海外アウトソーシングのデメリットと注意点

メリットの裏側には、海外だからこそ発生するリスクがあります。契約前に必ず把握しておきたい4つの注意点を見ていきましょう。
日本語品質・応対品質のコントロールが難しい
日本語対応のオフショアセンターであっても、オペレーターの多くは日本語を外国語として習得した人材です。日常会話には支障がなくても、クレーム対応での微妙なニュアンスや、敬語の使い分け、「察する」ことを求められる日本特有のコミュニケーションでは、国内センターとの差が出やすくなります。
問い合わせ内容が定型的な一次受付であれば問題になりにくい一方、複雑な相談や感情的なクレームが多い窓口では、応対品質の差がそのまま顧客満足度の低下につながります。海外委託が向くのは「業務を型化できる窓口」であり、判断や共感を求められる窓口は国内に残す、という切り分けが実務上の定石です。
マニュアル整備と管理工数という「見えないコスト」
海外委託で見落とされがちなのが、立ち上げと運用にかかる社内工数です。国内委託であれば「行間を読んで」動いてもらえる部分も、海外では通用しません。業務マニュアルは例外処理まで含めて明文化する必要があり、FAQの整備、定期的な品質モニタリング、現地とのオンライン会議など、発注側の管理負担は国内委託より確実に増えます。
人件費の差額だけを見て意思決定すると、こうした隠れコストで想定した削減効果が出ないケースがあります。委託料金の比較ではなく、社内の管理工数まで含めた総コストで判断することが欠かせません。
セキュリティ・カントリーリスク
顧客の個人情報を海外拠点で扱う以上、情報管理体制の確認は必須です。個人情報保護法では、外国にある第三者へ個人データを提供する場合、原則として本人の同意や委託先の体制確認が求められます。委託先のセキュリティ認証の有無だけでなく、データの保管場所や現地法制度まで確認しておくべきでしょう。
また、政情不安や災害、感染症の流行などで現地オペレーションが停止するカントリーリスクも無視できません。特定国への一極集中を避け、国内にバックアップ窓口を残しておくといったBCPの設計が求められます。
円安でコストメリットが縮小している
近年の実務で無視できないのが為替の影響です。海外委託の費用は現地通貨や米ドル建てで決まることが多く、円安が進むほど円換算のコストは上昇します。加えて、フィリピンやベトナムといった主要委託先国では経済成長に伴う賃金上昇が続いており、「海外=圧倒的に安い」という10年前の常識は徐々に崩れつつあります。
もちろん現在でも国内との価格差は存在しますが、契約時のレートを前提に長期の収支計画を立てるのは危険です。為替変動を織り込んだシミュレーションを行ったうえで、それでも採算が合うかを確認しておく必要があります。
委託先として選ばれる主な国と特徴

日本企業のコールセンター委託先には、いくつかの定番国があります。それぞれの強みを理解しておくと、事業者選定の際に「なぜその国に拠点があるのか」を評価しやすくなります。
フィリピン
世界有数のBPO大国であり、英語対応のコールセンター委託先としては第一候補といえます。米国企業のカスタマーサポートを長年受託してきた歴史があり、コンタクトセンター運営のノウハウが産業として蓄積されています。ホスピタリティの高い国民性も、顧客対応業務との相性が良いとされる理由のひとつです。英語窓口や、英語・日本語のバイリンガル窓口を検討するなら、まず候補に挙がる国でしょう。
中国・大連
日本語対応のオフショアといえば、歴史的に中国、なかでも大連が集積地として知られてきました。日本語学習者が多く、日本企業向けのBPO拠点が数多く置かれてきた経緯があります。日本語での一次対応やバックオフィス業務の受け皿として実績が豊富な一方、人件費の上昇や地政学リスクを考慮し、他国へ分散する動きも見られます。
ベトナム・ミャンマー
より低コストな委託先として存在感を増しているのがベトナムやミャンマーです。勤勉な国民性と若い労働力が魅力で、データ入力などのバックオフィス業務から日本語窓口まで、受託範囲が広がりつつあります。ただし日本語人材の層はまだ厚いとはいえず、大規模な日本語コールセンターの運営実績は事業者によって差が大きいのが実情です。実績の確認は入念に行いましょう。
失敗しない委託先の選び方

海外アウトソーシングの成否は、委託先の事業者選定の段階でほぼ決まります。価格表の比較に入る前に、次の3つの観点で候補を絞り込むことをおすすめします。
目的が「コスト削減」か「機能の獲得」かを整理する
最初にやるべきは、自社が海外に何を求めているのかの言語化です。海外委託の動機は、大きく「コスト削減型」と「機能獲得型」に分かれます。
前者は国内と同じ業務をより安く回すことが目的で、後者は多言語対応や24時間対応など、国内では実現しにくい機能を手に入れることが目的です。
この2つでは評価すべきポイントがまったく異なります。
コスト削減型なら業務の型化しやすさと管理コストの試算が重要になり、機能獲得型なら「その機能を海外委託以外で実現する手段はないか」という比較検討こそが重要になります。実は後者のケースでは、海外に出さずに目的を達成できる場合が少なくありません。この点は後ほど詳しく触れます。
品質管理体制と日本人・日本語ネイティブの関与を確認する
日本語窓口を委託する場合、現地に日本人または日本語ネイティブレベルのSV(スーパーバイザー)が常駐しているかどうかで、品質は大きく変わります。オペレーターの応対を日本語で正しく評価できる人材がいなければ、モニタリングも研修も機能しません。
商談の場では「日本語対応可能」という言葉の中身を具体的に確認するようにしましょう。応対サンプルの音源を聞かせてもらう、トライアル期間を設けて実際の応対品質を検証する、といったプロセスを踏める事業者は信頼しやすいといえます。
セキュリティ体制と契約条件を確認する
プライバシーマークやISMS(ISO27001)などの認証取得状況、データの保管場所、アクセス権限の管理方法は最低限確認すべき項目です。あわせて、契約面では最低契約期間や中途解約の条件、業務範囲変更時の料金改定ルールを事前に細部まで確認しておきましょう。
海外委託は一度立ち上げると切り替えコストが大きく、「合わなかったらすぐやめる」が通用しにくいためです。
なお、海外事業者と直接契約する場合、契約書の言語が英語や現地語になるケースがあります。契約内容を正確に理解し、交渉できる体制が自社にあるかどうかも、見落とせないチェックポイントです。
多言語対応が目的なら、海外委託だけが選択肢ではない

ここまで海外アウトソーシングを解説してきましたが、冒頭の「目的の整理」に立ち返ると、ひとつ重要な視点があります。もし海外委託を検討している理由が「外国語・多言語での顧客対応」なのであれば、業務を海外に出すことは必須条件ではない、という点です。
とくに近年は、海外顧客への対応ではなく「日本国内の外国人顧客への対応」のために多言語窓口を求める企業が増えています。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年の年間訪日外客数は4,268万人を超え、過去最高を更新しました。宿泊施設や小売、交通、自治体窓口など、国内にいながら多言語対応を迫られる場面はむしろ増え続けています。
この場合、海外にコールセンターを委託するオフショア委託には構造的なミスマッチがあります。多言語対応というメリットを得る代わりに、時差や商習慣の違い、日本市場への理解不足、管理工数の増加といった「海外であることのデメリット」を丸ごと引き受けることになるからです。
そこで検討したいのが、多言語対応を専門とする国内企業への委託です。たとえば株式会社ポリグロットリンクは、東京に本社を置く多言語コミュニケーション支援の専門企業で、多言語コンタクトセンター運営代行を提供しています。電話・メール・チャット・SNSといったチャネルを、日本語を含む多言語で24時間オペレーターが代行運営する体制が特徴です。
日本企業との契約・日本語でのやり取りで完結するため、海外委託にありがちな「要件がうまく伝わらない」「品質の議論がかみ合わない」というストレスがありません。多言語対応と24時間対応という海外委託のメリットを、海外であることのデメリットなしに実現できる構造です。通訳サービス(テレビde通訳・電話de通訳)や翻訳と組み合わせて、電話窓口の外まで含めた多言語対応を設計できる点も、単なるコールセンター代行にはない強みでしょう。
コスト最優先で大規模席数を安く回したいなら海外委託、多言語対応という機能が目的なら国内の専門企業、という整理が、失敗の少ない判断軸になります。
多言語コールセンターの相談はポリグロットリンクへ
コールセンターの海外アウトソーシングは、コスト削減や24時間対応、多言語対応を実現できる一方、品質管理や隠れコスト、為替・カントリーリスクへの備えが不可欠な手法です。成否を分けるのは「何のために外に出すのか」という目的の解像度にほかなりません。
外国人顧客への対応やインバウンド需要への備えとして多言語窓口を検討しているなら、海外に業務を出す前に、国内から多言語対応を実現する選択肢を比較してみてください。
株式会社ポリグロットリンクでは、多言語コンタクトセンター運営代行をはじめ、通訳・翻訳を含む多言語コミュニケーション支援について相談を受け付けています。自社の窓口にどの形が合うのか迷っている段階でも、まずはお問い合わせフォームから気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
■株式会社ポリグロットリンク